タイトル

《 第四考:八王子型人形山車の構造を探る〜所沢市御幸町、盛留立ち上げ@ 》

自由研究

学生諸氏は夏休み。夏休みといえば自由研究。ということで夏休み自由研究に
取り組みます。今回は八王子型人形山車(屋台)の研究です。屋台型の山車の
屋根を貫通する1本の柱を立て、その上に盛留(人形台座)を載せた江戸から明治時代に
八王子で多く見られた形式の山車のことを八王子型人形山車(屋台)と呼んでいる
ようです。今回、向かったのは所沢市。平成17年の「ところざわまつり」です。
修理のため、暫く曳き出されなかった所沢市御幸町の山車の修理が完了し、お披露目と
なりました。普段、立ち上げない一本柱人形高欄(盛留)を立ち上げる作業の様子を
見学し、八王子型人形山車(屋台)の構造の理解を深めたいと思います。

※写真(画像)の無断使用、転載等禁止。

盛留立ち上げ 盛留立ち上げ
人形高欄を立てていない状態の御幸町山車。後部屋根に柱を立ち上げるための
切り込みがあるのがわかります。囃子台と楽屋の間、山車のほぼ中心に一本柱を
受けるための柱が立てられているのも見えます。

盛留立ち上げ
山車後方に寝かされているのが人形高欄(盛留)を支え、立ち上げられる一本柱。
矢印で示したように立ち上げられ、山車の屋根上に人形高欄(盛留)を配することになります。

盛留立ち上げ
一本柱。手前側側面に丸い穴が空いており、そこを軸として柱を立ち上げます。

盛留立ち上げ 盛留立ち上げ
楽屋床面に切り込みがあり、その下に一本柱を受ける副木が軸受けとして配置されています。
ピンク色で示したように一本柱が差し込まれ奥の副木と軸で繋げられるのです。

盛留立ち上げ 盛留立ち上げ
普段、床面は板で塞がれており、常時、床面に穴が空いていることはありません(左写真)。
白いロープが見えるが、これを一本柱と結び、右写真に見える柱に入った切り込みへ
通されます。ロープは滑車を会して一本柱を引き上げる際に使用されます。

盛留立ち上げ 盛留立ち上げ
山車側面下から見える一本柱の軸受けとなる副木(左写真)。この穴に軸が通され、
一本柱と繋げられます。右写真は、人形高欄(盛留)の台座の入った箱。奥は、台座の
下に付けられる、龍の彫刻の入った箱。六角形の台座は組まれたまま仕舞われています。

盛留立ち上げ 盛留立ち上げ
人形高欄(盛留)台座下、彫刻の箱、上面。「雲龍」?でしょうか…。崩した字体で分かりません。
他にも、たくさんの長持が用意されています。奥にはタンス…?!何が入っているのでしょうか。

盛留立ち上げ 盛留立ち上げ
「関羽」と「周倉(?)」の頭函。市の文化財登録では「張飛」との事でしたが函書きは…
当日も話題になっていました。函書きを見る限りは「張飛」ではなさそうです。
(本項では、以後、周倉で統一していきます)また、作者名が「原舩月」となっているのも面白い。

盛留立ち上げ 盛留立ち上げ
衣装と胴体が用意されます。胴体は例によって竹と木で出来て…と?、各地で見た(と
いっても僅かですが)胴体より、木の部分が多いようです。側面が木で出来ているのは
あまり見た記憶がありません。もしかしたら骨組みを覆う、渋紙で見えなかっただけかも
しれませんが。多くは胴体の側面も竹で、割と緩やかな面で構成されていたように思います。

盛留立ち上げ 盛留立ち上げ
人形高欄(盛留)と一本柱の付け根に付けられる持ち送り彫刻。計4枚。
それぞれに方角が記されており、取り付け位置を確認できます(写真右)。

盛留立ち上げ 盛留立ち上げ
函書きと木札。函書きには…読めません。達筆すぎます。この場でお聞きしたのですが
書き留め忘れてました。残念。小さい文字は「所澤町五番山車附属品 秋田正太郎所有」と
読め、木札は「古今亭、原舟月作」と書いてあるそうです。同席していた先生に電話で
問い合わせたところ、「明治廿七年第・・・」までは分かりました。それ以降は・・・宿題で。

盛留立ち上げ 盛留立ち上げ
人形高欄(盛留)台座下の彫刻が姿を現しました。極彩色に塗られた龍の彫刻です(左)。
同時に人形高欄(盛留)の台座も函から出されました。人形を固定する柱が立てられます(右)。

【所沢市御幸町、盛留立ち上げAへ】

今回は此処まで。次回は人形の組み立ての作業からお伝えします。
取材に際し、御幸町の方々はじめ、御協力頂いた方々に御礼申し上げます。

2006.8.10up

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