タイトル

《 第十考:川越の山車の構造を探る〜川越山車解体編@ 》

自由研究

第ニ考で川越の山車の切組を見学することができましたが、今回は反対に解体。
山車蔵に山車をバラして仕舞う作業です。
平成22年6月のとある日曜日に、修復が完了した六軒町様の山車の解体を見学させて頂きました。
六軒町の関係者の方々、大変お世話になりました。
今回は関係者(職人の方々)の方が顔出しOKでしたので、山車上の作業のかたには
プライバシー処理を施しておりません。問題ございましたらご一報ください。

※写真(画像)の無断使用、転載等禁止。

六軒町解体
AM8:30、大きな山車蔵が開き、いよいよ作業開始です。山車の一回りも二回りも大きい山車蔵から
山車が曳き出されます。今回は修理後、初のバラしです。新材の確認と符牒の書き込みが行われます。

六軒町解体
3輪の山車の方向転換はいろいろありますが、三番叟の山車では端元の職人の皆さんが轅部分を
やや持ち上げ気味に行きたい方向へ押し、車輪を引き摺りながら方向を変えます。豪快です。

六軒町解体
方向転換終了。ギィーっという音をさせながらの方向転換は迫力があります。2トンもの重さの山車が
一気に方向を変える様は必見です。今日はここでバラバラに分解されますので車止めで固定されます。

2003川越まつりにて 【閑話休題】 道路に刻まれた轍

←今回は解体の行われる六塚神社境内から出ることはありませんので、見ることは出来ませんが、 曳き回しでは、道路にこのような轍が刻まれます。緑色の矢印に沿って伸びる轍が前輪の方向転換跡です。 道路に刻まれた、この轍をたどれば、きっと六軒町の山車に出会えるはずです。
 同様の方向転換は、交通規制外の新宿町の山車でも行われます。 川越まつりでは、足元にも注意を払ってみるのもおもしろいです。いろいろな情報が得られるかもしれませんヨ。

六軒町解体
さぁ、バラされる前にアチコチから山車を眺めておきます。360度満遍なく見ておきます。
「敬神」の扁額は山車蔵から曳き出される前に外されております。

六軒町解体
ハの字に設定された後輪は車軸にかかる力を分散させる効果があります。下高欄羽目板の彫刻には、
「埼玉縣北足立郡大谷村字大谷本郷 彫刻 山田彌三郎 明治参拾四年拾月」の銘が刻まれています。

六軒町解体
3輪の山車では珍しく廻り舞台となっていますが、元々は廻り舞台ではなく、昭和35年に廻り舞台へと
改造、台輪の上枠が新調された部分、下枠が旧来からの台輪と分かれています。厚みに違いが見えます。

六軒町解体
おっと、いよいよ解体が始まりました。先ずは後幕が外されます。同時に上高欄のバラシも行われます。
高欄は全部バラさず、4隅の親柱(擬宝珠)と笠木や平桁、地覆、束を組み合わせた欄干部分に分けます。

六軒町解体
山車後部に長い梯子が掛けられます。このパターンは…。そうです。仲秀英作の三番叟の人形を降ろす
ための梯子です。最上部に三番叟の人形が現れます。烏帽子を被っていない姿はそうは見られません。

六軒町解体
職人の方が背負って降ろすため、人形を背中に括り付けます。組み立てではクライマックスとなる、人形
を背負っての作業ですが、バラシでは序盤で、もうクライマックスが訪れた形です。緊張感高まります。

六軒町解体
慎重に、慎重に、梯子を降ります。最上段で人形を背負ったまま後ろ向きになる瞬間は緊張の一瞬です。
あとは梯子を降りるだけです。慣れた様子で、梯子を降ります。無事、地上へと降ろすことが出来ました。

六軒町解体
四方幕を外しに掛かります。櫓行灯の構造が丸見えに。人形が下がっていると、人が居られるスペースは
柱と櫓行灯の隙間しかありません。そうそう人形の様子も覗いてみました。支え無しでも立てるのがスゴイ。

六軒町解体
人形の様子を見に行っている間に山車の方では箱棟+鬼板、中高欄の竹の節が外されていました(左写真)。
作業早いです。現在、中高欄をバラしている真っ最中。笠木を上に引き抜き、外されているところです。

六軒町解体
中高欄は欄干タイプではなく、羽目板として彫刻が収まるタイプ。そのためか、全部バラされます。
彫刻を挟み支える部材を外し、彫刻を引き抜きます。丁度、人の手が届きにくい位置なので大変そうです。

六軒町解体
彫刻を支える下側の部材を外し、三味線胴に当たる部材を外します。今、気がつきましたが、中高欄を
支える柱は後幕で隠れてしまうのに漆塗りが施されています。チラリとしか見えない所も抜かりなしです。

六軒町解体
左側面が取り外され、内部の櫓行灯の構造が透視図のようによく分かります。上下する外枠、人形を
迫り上げる箱状の柱も見えます。反対側もさっきと同様に笠木から外していきます。手順は同様です。

六軒町解体
後面の中高欄も同様にバラし、残った2本の柱を外します。完全に櫓行灯が剥き出しになりました。
続いて、前面の中高欄をバラします。屋根がある分、人手は少なくて済み、浮いた人手は下高欄へ。

六軒町解体
下高欄も上高欄同様、全部バラさず2本の親柱(擬宝珠付き)と3面に分かれる欄干部分に分けるのみ。
欄干部分も笠木、平桁、地覆、束にバラせるはずですが、作業の効率の面からバラさずにおかれます。

六軒町解体
下高欄に続き、下高欄羽目板彫刻を外しに掛かります。横木を外すと彫刻板が上に引き抜けます。

六軒町解体
ホゾに彫刻板がオトシてあり、ホゾに沿って引き抜けば、スッポリ外せます。側面も同様です。

今回は此処まで。次回は鉾部分の作業からお伝えします。

川越の山車の構造を探る〜川越山車解体編Aへ

取材に際し、六軒町の関係者の方々、御協力頂いた方々に御礼申し上げます。

2011.5.20up

もどる

inserted by FC2 system